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Posted on 2019/01/18 by KAKUKI PROJECT

取ったばかりの里山の木で椅子をつくろう!①~グリーンウッドワークのすすめ~

地域の里山には多様な種類の木が育っています。
手入れをしていない山の木は、細かったり、曲がっていたり、枝が多かったりして、とても大材がとれるような立派な木はありません。素材生産数も多くないので、市場に出ることもなく、例え市場に出しても安いので、好んでお金かけて手入れする業者もいません。森に木があるのに使われないなんて...。
しかし、そうした木材もうまく活用することができるのです。

今回は、育ちが悪く細い木や、間伐した木から材料をとって、子ども用の椅子をつくる方法をご紹介します。
  
|「グリーンウッドワーク」という取り組み
 
~それは、人力の道具で生の木を削る、古くてまったく新しいものづくりです~
 
「グリーンウッド(GREEN WOOD)」 は「生木」を意味します。 「生木」とは、森から伐採したばかりの乾燥していない木のことです。 その生木を伝統的な手工具を使い(大型機械や電動工具は使いません)割ったり 削ったりしながら小物や家具をつくるものづくりを「グリーンウッドワーク」 といいます。

■グリーンウッドワーク協会より
https://www.greenwoodwork.jp/グリーンウッドワークとは/
 
体験をしてみて筆者が感じたのは、グリーンウッドワークは、身近な森から材料をとって、自分や身近な人の生活に必要な道具を、必要になった時にすぐに作れるといった地産地消が誰にでもできて、作りながら、生の木の「生命(いのち)」を感じ、いのちのモノづくりをすることができます。そのささやかなモノづくりは森を壊すことなく、人と森とが程よい距離感で共生することができる持続可能なものづくりを在り方を示してくれています。
 
|椅子づくり

今回グリーンウッドワークで椅子づくりです。
教えてくれるのは、森林文化アカデミー準教授で、木工を教える久津輪 雅(くつわ まさし)先生です。

 
今回使用する材料は、直径10から15センチくらいの幹を使用します。
会場の「みのかも健康の森」の中で、伐採してきたものです。下写真のサイズは15センチくらいです。この太さの幹からは、1mもので椅子が4から5脚とれます。
 
《15センチほどの幹。みのかも健康の森で採取》 

《部材ごとに長さ取りしてある材》
 
 
樹種は栗です。栗は広葉樹の中でも水の通り道(導管)が大きく、繊維方向がまっすぐであるためまっすぐに裂けやすく、ほどほどに軟らかいので加工しやすいことが特徴です。
 
丸太から材を木取りするのに使うのは、木槌と万力(まんりき)です。
割りたい位置に万力の刃を当て、刃の中央部を木槌で叩き、木を割っていきます。

割ってみると、繊維方向に従って、まっすぐに裂けていきました。

 
まっすぐに裂ける栗の木ですが、自然のものはいつでもどれでもまっすぐ、ということはありません。
私が丸太を4等分に割ろうとすると、刃は丸太の中心にまっすぐに入ったはずなのに、途中から中心からずれて裂けていきました。これは、丸太の中心程、若く、まだ幹が細かったため、ひょろひょろと成長したことで曲がってしまったものです。そういう木の成長の証をみると、最初は頼りない細い木でひょろひょろとしか成長できなかったのに、今ではこんなに太く、こんなにまっすぐに育つようになって、、、と感慨深いものが込み上げます。
 
木取りした材を「削り馬」と「銑(せん)、英語でドローナイフ」を使って、丸棒に仕上げます。
 
《削り馬(シェービングホース)》

《削り馬に材をセットし、馬にまたがり銑で削っていきます》

《生の木は軟らかく、簡単に削ることが出来ます》
 
削った木を見てみると、濡れていることが分かります。冬は木の成長が止まるというのに、なんと瑞々しいことか!今年は暖冬ということもあり、春の芽吹きの準備が早く、ぐんぐんを水を吸い上げ芽吹こうとしているのでは?ということでした。木は、すでに春に向かっているのですね。

《削った木を見ると濡れていて、導管が地中からぐんぐんと水を吸い上げていたことが分かります》
 
さて、丸太にまたがってまずは、椅子の脚を削ります。

ぐんぐん削れて、形になっていく様子が楽しくて、無心になって作業をしました。1時間ほどで脚が4本完成。

 
それから貫、座枠、背、肘を削っていきます。
丸い棒と違って、今度はふくらはぎ形をしています。しかも、これらは脚のホゾ穴にホゾを差し込んで、嵌合しなければいけません。
ちょっと難易度が上がります。

 
ふくらはぎ形に成形するためには、銑を材に対して斜めの角度を変えながら細かく動かして形作っていきます。

 

 
座枠は、ふくらはぎの頂点から貫に向かって曲線が下りてきて、端部に向かって直線で削ります。
写真のように貫の位置まで曲線状に削り、削り束をつくります。削り束を銑でべりっと剥がすように削ぎ落とします。
コツとおりやると案外簡単に、形通り成形することができました。

 
生木で家具を作る、筆者が身を置く木材・木造業界というのは、木をよく乾かすことが品質の良し悪しと考えるし、家具業界も同様で、量産で同一の品質を生み出すためにはやはり木材の乾燥が大事です。生木でつくるということは、削ってから、急速に乾燥することになります。今回作ったほぞも、水が飛んで木が痩せたら、穴にスカスカで、木が組めないということになるはず。それなのに、椅子には絶対に必要な安定した強度をどうやって出すのか?

それは木材の収縮特性をうまく活用することで、しっかりと木組みが出来るからです。木というのは接線方向、放射方向、繊維方向で収縮代が異なるという収縮の異方性をもっています。

放射方向の木の表情がいわゆる柾目。

接線方向の木の表情がいわゆる板目です。

いちばんよく縮むのが板目です。逆にあまり縮まないのが柾目です。この異方性を読んでこのように木取りをしました。下写真のように、上面を板目、横面を柾目におきます。

 
そうすると、乾燥したほぞは縦に長い楕円になります。ほぞ穴は、円の短いところに合わせた大きさにしておくと、ほぞ穴のなかで楕円がしっかり効いて、抜けないほぞになります。
ほぞに対してほぞ穴が小さくても、生木は軟らかいので、適度に力を加えて穴に差し込むことが出来るのです。こうした技術は、長くものづくりと向かい合ってきた人類の知恵であり、文化だと感じました。グリーンウッドワークの昔から変わらないものづくりの姿勢を感じるととても感慨深いです。
 
 

削り出した材は、1週間ほど自然乾燥させ、よく乾かします。
次回、組み立てと座編みをして完成です。
続く!