2019年 8月 のアーカイブ

Posted on 2019/08/30 by KAKUKI PROJECT

【コラム】あいちの木でいえづくり

愛知県のイメージといえば、工業都市でしょうか。
戦後の日本の経済発展を支えた愛知のものづくりは、工業化を先導していきました。

 

ご存じでしょうか。
実は、愛知は美しい自然資源や森林資源が豊富でもあります。
愛知県の森林のうち、木材生産用の林地「人工林」がどれくらいの割合かを示す「人工林率」が全国第3位という木材大国です。これは昔から林業が盛んな地域であったためです。しかし豊富な森林資源を持つ愛知の林業は現在、森林資源の供給先や高齢化と人手不足に悩まされています。

 


(※参照1)

木材の生産量に対して、実際に利用されたのは3割ほどです。しかも、木材として建物の柱や梁などになる太さまで育った良質な木ばかり。このような伐採適齢期を迎えた木材を活用しきれていないのです。これは売り先の問題ばかりでなく、林業の担い手が高齢になっているにも関わらず後継者がいないことや、木材の価格が下がり、売ってもお金にならないという業界の構造に問題があります。こうした問題を解決するには、私たち消費者が、愛知の木を積極的に活用していこうとする「木づかい」の心が求められています。

今回筆者は、そうした問題に消費者として出来る限りあいちの木を使う家づくりに取り組んだ、箕浦さんご家族のお宅に伺いました。


|あいちの木がつくる、家族4人幸せな住まい


箕浦さんのお宅では、柱や梁など構造材や、羽目板や床材を愛知県産のヒノキを使用しました。玄関框には愛知県産のケヤキ、食卓の天板には存在感たっぷりのスギとこだわりの木づかいをしています。








|なぜ、あいちの木をつかおうとおもったのですか?

箕浦さんご夫婦は、いいます。
「愛知県は林業が盛んな地域です。でもそのことは多くの皆さんが知りません。
あいちの木があること、その質の良いことももっとみんなに知ってほしい。」


【間仕切りに使用された愛知県産の杉。木目・色がきれいです】

一方であいちの木で家づくりをしてみて分かったこともあります。
あいちの木を使う工務店は少ないのです。
箕浦さんは、愛知県で、木の現しが得意な工務店で家を建てましたが、そちらが使用する木材の産地は東濃(岐阜)でした。そのため、あいち認証材を出来る限り使用したいとお願いし、あいち認証材を使った家づくりをすることができたのです。

地域の木材を指定して使用することは、その地域の産業(林業)を支援することになります。最近では住宅だけでなく、店舗や保育施設、教育施設などの非住宅でも木造で建てることが増えてきています。木の空間はいいものです。心身の情緒を整え、心がやすらぐだけでなく、箕浦さんのように、地域の木材を指定して使用することで地域経済を助長することができます。そうすると山林の手入れが行き届き、山林の治水が守られるので、綺麗な水が私たちの生活を潤してくれ、山林が深く根張ることで、土砂などの災害からまちを守ってくれます。
また、森林には地球温暖化への抑制効果があることもよく知られています。これは地球温暖化の原因は二酸化炭素(Co2)排出といわれますが、植物はこのCo2を吸収し、固定化するためです。

愛知県では、愛知県産の木材を使用した建物でどれくらいCo2固定化しているのかを数値化する取り組みを行っています。箕浦さんのお宅の場合、愛知県産の木材が貯蔵したCo2量は12.2tになります。日本のCo2総排出量でみると、2014年度は、国民一人あたり約10トン/年排出している換算になります。(※参照2)家一棟あたりのCo2貯蔵量だけでもそれだけの効果を持っているのです。


【「あいち認証材CO2貯蔵量認定制度」よりCO2貯蔵量認定証を交付されます】


|あいちの木を使う民間施設が増えています

愛知県の農林基盤局林務部 林務課 木材利用推進グループでは、愛知県の木をもっと使おうと「あいち木づかいプラン」を策定しています。この取り組みは2003年度からはじまり、以降毎年度策定し、率先して県産木材の利用を進めています。

その取り組みのひとつ「あいち認証材制度」についてご紹介します。
あいち認証材制度とは、愛知県産の木材・製材加工品があいちの木を使用していることを証明し、他県や海外産の木材とは分別管理されていること明らかにした認証制度です。出荷時に「あいち認証材」マークが貼られます。箕浦さんの家に使用された愛知県産の木材にもこのマークが貼られ、あいち認証材であることを明らかにしています。


 
 
時代が変わった今年、令和元年度からは「木の香る都市(まち)づくり事業」が始まっています。この事業ではあいち認証材を活用した、一般の県民が利用する県内の民間施設等に対して支援を行うものです。あいち認証材の普及に取り組むこの制度を利用して、木造のやさしい木の香る建物が私たちの暮らしの身近に作られていきます。
都市の中に木造の建築が増えることで、私たちの暮らしはもっと暮らしやすく、安らぎのあるものになるでしょう。今後のあいちの木の行方が楽しみです。


(※参照1)
愛知県愛知県 農林基盤局林務部林務課木材利用推進グループ
HP「令和元年度「あいち木づかいプラン」を策定しました」より
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/rinmu/0000084307.html

(※参照2)
JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
HP「4-3 日本の二酸化炭素排出量について知りたい」より
https://www.jccca.org/faq/faq04_03.html

【取材協力】
箕浦さんご家族(愛知県在住)
ご協力ありがとうございました。

Posted on 2019/08/16 by KAKUKI PROJECT

100年続く広葉樹の森づくり

岐阜県本巣市根尾。

HP:ウォーカープラス「桜名所お花見特集」より出典
https://hanami.walkerplus.com/detail/ar0621e26027/

樹齢1500年以上の1本桜が毎年見事な花を咲かせることでも有名な根尾は、標高800〜1000m級の山々に広葉樹が生育する緑豊かな地域です。根尾の山は冬になると雪によって山道が閉ざされ、春には豊富な雪解け水と日当たりの良さのおかげで、多様な生物が生育する森を育んでいます。この自然豊かな根尾の地で、有限会社根尾開発の小澤社長は、100年先の未来に続く広葉樹の森づくりに取り組まれています。その森づくりの一部を見学させていただきました。

【見学者と小澤社長】

|NeoWoods 根尾の広葉樹活用プロジェクト

根尾開発の広大な管理地は、広葉樹が多く生育しています。
広葉樹といっても、その樹種は多種多様です。標高の低い辺りには、サワクルミが多く、標高の高い800m辺りには、ミズメザクラやブナ、ナラ、などが多く生育しており、場所ごとに育ちやすい木の種類が違います。

【広葉樹の森を皆伐している現場。架線をかけ、効率よく集材しています。
 (広大な広葉樹林の一部を皆伐。皆伐跡には収益の高い針葉樹を植えていきます)】

現在日本の広葉樹の素材生産量は、1割ほどです。多くは細かくし、チップやパルプ、ホダギ、薪などとして利用されます。それは、広葉樹の持つ個性を全く活かすことができていないことを示しています。根尾開発でも、広葉樹のうち家具用材として取引されるのがおよそ1割で、残りは小さかったり、曲がっていたり、腐りがあったり、割れていたりして規格外だとして用材にならないため、チップなどになっています。

【細い丸太。長さを短く揃えて薪に利用されます】

しかし、広葉樹は、木色がピンクのサクラ・樹皮が美しいブナ・強度も木目も美しいナラ、ホウバ寿司で知られるホウの木というように、木目も木色も、葉も樹肌も種類によって全く違います。育ち方や育つ時間が違えば、曲がりや節、年輪なども違います。広葉樹はその個性こそ、豊かで面白いものです。家具に使えないとしても、チップではなく、器やおもちゃなど木の個性を生かした使い道はあるはずです。

【集材された広葉樹。ブナやオニグルミ、トチ、ミズメザクラ、シデなど様々な広葉樹があります】

根尾開発では、「NeoWoods」というブランドを立ち上げ、民間連携で、根尾の広葉樹を器やおもちゃなどに加工して使い手に届ける取り組みを行っています。素材生産者と製材者と家具屋が連携しているからこそ、根尾の森で育った年数を刻んだ器を消費者にお届けすることができます。

〈この器は家具屋が生産者から52年育ったと言われる木を選んでいます。木の年数を器に刻んでいます〉
HP:「NeoWoods根尾の広葉樹活用プロジェクト」より出典
http://neowoods.jp/neowood.html

【NeoWoods根尾の広葉樹活用プロジェクトとは】
オークヴィレッジ株式会社(岐阜県高山市)が地域での森林の利用に向け、モノ造りで地域産広葉樹と市場を繋ぐをテーマに、素材生産者の有限会社根尾開発と、製材業の株式会社カネモク(岐阜県高山市」)と家具生産者のオークヴィレッジが連携し、「持続可能な林業における六次産業化の仕組み」をつくっています。三社が連携することで、規格外の多様な広葉樹も、それぞれが持つ個性を生かした器やおもちゃなどに加工し、家具以外の用途を拡げ、森林資源の価値を高めています。

|太い木が欲しかったら僕じゃなくて息子にお願いして

根尾開発が所有する広葉樹の森は、広大で、見せていただいたところだけでも1000haありました。標高800mほどの山ですが、頂上から町までの林道があり、4t車が山の中を移動できる環境があります。この山は現在「択伐施業」を行っています。択伐というのは、まっすぐ育ついい木を選び、より大きくまっすぐ育つように、周辺の木を伐採して成長を促そうとする方法です。択伐によって伐採された木はチップなどに利用されます。

【100年の森づくりをしている現場です。まっすぐ大きく育とうとしている木々が見られます。細くてひょろひょろした木は択伐されることになります。】
 

小澤社長は言います。「いい木見つけたら切ってあげるよ。好きなの選んで」
そして、森の今を知らない人にできるだけ、森に来てほしいと言います。
家具製造者は「板材」としてしか見ていないので、注文した材は森にあって当たり前で、どういう場所に生えているかを気にしてはいません。そこに、素材生産者と、家具製造者の摩擦があります。だから、「山に来てよ」。
山に来てもらえば、いろんな樹種の木がどのように生育しているのかが一目で分かります。
”今まだ細くて板材に向いていない”や、”欲しい材が難所に生えている”など、自然の素材ならではの理由で、どうしたって品質の不揃いや価格の変動がありえるのです。それを使い手に理解をしてもらえないと、広葉樹の山づくりは事業として継続していくことが難しくなります。
家具屋が森に来て、今の森の状況を見て、細い木が多いことを知れば、”太い材をとることが難しい”ということが分かります。そこで、小澤社長は家具屋にいいます。「もっと太い材が欲しければ、僕じゃなくて、息子にお願いして」。
広葉樹が用材になるには成長が遅く、まだあと30年ほどかかります。それでは人間の老いの方が材になるより早いのです。木のものづくりというのは、材を育て、使えるまで木が育つまでの長さで考えると本当に気の長い話なのです。
素材の価格や品質を揃えれば、良材なんか収穫量の1割ぐらいにしかならない世界です。
しかし例えば、お皿を作りたい家具屋が山にきて、どういう木目や太さ、どうやって木取るかといった完成をイメージして木を選べば、自然素材ゆえの不揃いを個性あるものづくりに変えることが出来るのです。
 

|根尾の山には豊かな森林資源がいっぱい

根尾開発では、自社が管理する山で町おこしをしたいと考えています。
筆者が参加した森林見学では、私たちが来るのに合わせて、広葉樹の森に物見台をつくってくれていました。

【物見台、訪問の前日に雨の中作ってくれました。本当にありがとうございます】
 

この日は6月上旬でしたが、夏日で暑い一日でしたが、物見台には、ブナやナラなどが四方を囲み、爽やかな高地の風が吹くおかげで、とても涼しく、また野鳥のさえずりと葉の揺れる音だけに包まれ、穏やかで心地のいい森林浴を楽しむことが出来ました。今回、美味しい珈琲とお菓子をいただきながら、根尾の山づくりについていろいろ伺うことが出来ました。
根尾の山を今後、こうした森林浴をイベントにしていきたいと話していました。
広葉樹は四季折々の表情を見せてくれます。夏には避暑、秋には紅葉とおいしい木の実やきのこを楽しめます。秋には栃の実が収穫でき、沢まで下りていくと、栃の実が集まる穴場があり、それをたくさんとって栃餅をつくって食べる。そんな実りの秋もこの山の魅力です。
根尾の山を見せていただいて、まだまだ活用できる森林資源はたくさんあると感じました。
暑い夏、根尾の山が豊富な森林資源を皆さまに披露できる日も近いのではないでしょうか。
 


【美しいブナ林】

【ブナ林の中を散策】

【森一帯にはシカが多く生育しており、シカのフンが見つかりました】
 

根尾開発
代表者 小澤 建司
所在地 本巣市根尾樽見27番地の7
電話  0581-38-2353
NeoWoodsHP http://neowoods.jp/
【根尾開発とは】
根尾開発は、本巣市根尾地区を中心に林業を営んでいます。現在、木材価格は40年前に比べると4分の1程度の価格にしかなりません。しかし、CO2の吸収してくれるのは森林だけです。そんな森林を、100年先まで繋げてあげるのも私達の仕事なのです。その仕事に誇りを持ち、今現在の技術を伝承しまた、海外にも目を向け新たな取り組みも展開していきます。
(公益社団法人 岐阜県森林公社 森のジョブステーションぎふより出典
 https://gifu-shinrin.or.jp/company_info/20190209

Posted on 2019/08/01 by KAKUKI PROJECT

【コラム】みのかも健康の森で遊ぶ夏がアツい!

美濃加茂市。

美濃加茂市は、岐阜県の南部に位置する人口57,000人の町です。
駅前やバイパスには、大型のスーパーやドラッグストア、ホームセンター、飲食チェーンが立ち並ぶ都市郊外的側面と、農業が盛んで森や川での遊びが楽しめる穏やかな田舎的側面があり、生活のしやすい町です。

美濃加茂市では、「里山千年構想」を掲げ、山や川のある穏やかな美濃加茂市を未来の子どもたちに残すため、美濃加茂市の森づくりと、森がある良さを啓蒙しようという取り組みを行っています。

《美濃加茂市の森全景。美濃加茂市ホームページより》
 

美濃加茂市の森づくりは、市の職員や加茂森林組合が中心となり取り組んでいて、明治以降、松林で枯れた山は、栗や桜などのお日様が大好きな広葉樹が育つ、豊かな森へと成長しました。広葉樹は100年200年と長い年月をかけて大きく育ちます。大きく育った幹は、国産の高級家具の素材として使うことが出来ます。人は潜在的に木が好きで、木の家具に特別な思いを寄せているように思います。ところが、現在の日本には木の家具に使えるまで成長した木は少なく、外材に頼っているという現状があります。それを国産に戻そうと思うと、美濃加茂市のように森を育てる政策がとても重要なことなのです。

 
|みのかも健康の森
 
美濃加茂市にある「みのかも健康の森」は、誰もが気軽に登山や山遊び、木のものづくり体験ができる自然公園です。飲食コーナーには、地域の食材を使ったメニューや、地域の木材を使った楽しげな家具や、室内で子どもが遊べるコーナーもあり、小さなお子様からご利用できるようになっています。

 
小学生以上のお子様なら、ツリートップアドベンチャーがおすすめです。木の上に渡されたロープの橋をわたって木から木へ移動していくフィールドアスレチックで、命綱をつけて子どもの身長の何倍もある高さの木を渡っていく感覚は、ドキドキワクワクします。
 

大人も楽しむ自然遊びでは、木の小物づくりイベントがあります。木の小物では、過去にヒンメリを作ったり、グリーンウッドワークで木のスプーンを作ったり。暮らしの道具や雑貨を自分でつくってみたいなという、モノづくり欲求は、ここで発散してみてはいかがでしょうか。

 
【最新イベント情報についてはコチラから】
みのかも健康の森公式HP

 
|美濃加茂市の里山千年構想
 
美濃加茂に未来ある森を残そうとする、この取り組み。

この取り組みで最初に始めたことは、森の幼稚園でした。
森の幼稚園は、市の職員やボランティアのお母さんたち、市民たちの手で作られてきました。森の中にはたくさんの植物や動物、昆虫などのいきものがたくさんいて、いきものや、季節の移ろい、山の地形を生かした自然遊びを介して子どもたちの心と体を育みます。大人が里山での遊びを子どもに与えてあげることで、子どもは森の中で多くの気づきを見つけることが出来ます。

それにそうした自然体験は、大人になってからも忘れることはありません。森で育まれた子どもは、社会経験を重ねていい大人になっても自然が好きなままではないでしょうか。森の幼稚園での取り組みは、森が子どもを育て、子どもが森と育ち、子どもが森を育てる循環を生んでいきます。

このように学べる里山があることで、市民が活動できたり、関係人口を増やして市外との交流ができたり。居心地の良い里山のおかげで、県外から移住したり。美濃加茂の森には大きな可能性がありました。

里山千年構想は、森と市民が一緒に千年先の未来に歩むことこそ、美濃加茂というまちのアイデンティティになる。そんな期待を感じました。