2017年 6月 のアーカイブ

Posted on 2017/06/30 by KAKUKI PROJECT

大建metの平野さん、布村さんに使い手に余地を残すためのデザインのお話を伺いました 

大建metが考える使い手に
余地を残すデザインとは
 
使い手が使いこなしていくということ。
そのためには作り込まないこと。
 
使いやすい、シンプルなシステムを提供していきたい。
 
 

 
 
|コンテナをつかった事務所
 
 
岐阜市若宮町、長良橋通りをすこし中に入る通りに、小さいけれどひときわ目立つ、コンテナのタワーがあります。そこは設計事務所「大建met」の事務所です。大建metの代表、平野勝雅さんと布村葉子さんに建築とデザインについてお話をうかがいました。
 
大建metは、12年前の2005年に設立されました。
平野さんは前歴である公共設計をおこなっていた親会社、大建設計で、当時活動していたプロジェクトチームが、大きなコンペで仕事を受けたことをきっかけに独立。チーム名が事務所名になりました。布村さんは、みかんぐみで修業。独立する平野さんの誘いを受け、大建metの一員として地元岐阜に帰郷します。
 
創業メンバーの平野さんと布村さんのお二人が以前からずっと考えてきたことについて伺いました。それは「人が建築を使いこなすためのシステム」ということです。そのことについていくつかのプロジェクトをご紹介いただきながらお話を伺いました。
 
 

 
この写真は岐阜県揖斐郡池田町の「道の駅 池田温泉」です。杉の普及を目的に県産材補助金をつかったプロジェクトでした。池田町は温泉も有名で、この道の駅は町の直営で収支も順調で今では多くの人が訪れる名所になっています。オーダーは木を使うこと。そして様々な店の規模やサービスの内容に対応できる自由度の高いプランニングが求められました。実際に設計が始まると、立ち上がってからの自由度のみならず、計画段階で次々と入居希望の人が現れ、その要望にあわせるための自由度も求められます。2m角を一番小さいものとして、3.6m角、もう少し大きめのL字型の3つのユニットを組み合わせたものになりました。また木の普及という観点では、構造と仕上げを一体にしたデザインを考えました。構造は特殊で、垂直の柱は一本もなく、すべて斜めの柱や部材で構成されています。この構造と仕上げが一体になっていることで、この仕事に関わった大工さんたちもはじめから最後まで自分たちが関わっているという実感が喜ばれたといいます。
 

「道の駅 池田温泉」図面
大中小のユニットの組み合わせで構成。ユニットごとにお店が入る。木造の商店街。
 

外観 垂直の柱はなく、すべて斜めの柱で構成
 

内観 屋根のかかる路地からみた店。それぞれの店が適度な距離感で向かい合っている。
 

内観 地域振興施設。間仕切りのない大スパン空間で産直の野菜などを扱う。
 
 
 
|作り込まないこと。使い手に委ねること。
 
 
この道の駅池田温泉は、使う人の「らしさ」がでるようにと願ってつくられています。すべてを使い手に委ねるのでなく、そこに単純ではありながらも基本となる骨格、最低限のシステムをつくり、それが変化していくということが考えられています。この建物も期待通り、使い手の人々が自分たちの使いかたで空間を変化させています。特に屋根のかかった路地のような空間に、少しづつ店の内部がはみ出していくことで、自然発生的な街の賑わいを醸し出し始めているそうです。
 

模型を使い、設計時の思いを語る布村さん
 
 
 
|すごろくハウス、スチールとFRPであらかじめ工場で生産
 
 


 
このプロジェクトは一人のクライアントのために作ったものです。2009年の仕事ですが、先の池田町のようなシステムと同じような考えが見られます。同じ多きさのスチールとFRPの箱を工場で先につくって現場では置くだけにしたのです。コンテナハウスのような接続しやすい箱だけを用意して、それを将来移動したり、また付け足してもいけるような方法を考えて実現したものです。期待通り、クライアントは住み心地の良い土地にコンテナハウスを移築されて、今現在も住まわれているとのことでした。
 

「すごろくはうす」図面 スチール製のユニットと連結するFRPで構成。
 

工場であらかじめ製作した、スチールプレートでつくられたユニット。
 

ユニットはトラックで運べるサイズから決められている。
 

内観 室内の家具も同じ考え方のシステムをつかって増殖できるように考えている。
 

「すごろくハウス」の模型を使いその仕組みについて語る平野さん
 
 
 
|木造建築とデジタルファブリケーション
 
 
取材の中で、彼らの仕事と「大工」の関わり方について色々議論が飛び交いました。プレカット加工の普及によって大工の仕事はますます合理化されてきたのですが、同時に大工そのものの職能が低い地位になってきてしまったのも事実です。いま大工の数は激減して、合理化と同時に大工そのものの低減が大工不足を招き、さらなる合理化を必要としている状況にいます。道の駅池田温泉では仕上げが構造になっているので、大工が初めから最後までプロジェクトに関われたと喜んでいたと言います。製作に関われたことが誇らしいと。
こうした背景の中で「デジタルファブリケーション」の話にもなりました。デジタルファブリケーションとは、デジタルデータを介していつでもどこでも、ものがつくり出されることが可能な道具です。今まで工場生産では、専用のCADにデータ入力して専用の工作機械で加工なされていましたが、これからは汎用CADや画像のデジタルデータで動かせるNCルータやレーザーカッター、3Dプリンターなどがますます普及していくでしょう。材料も木だけではなく樹脂も使うことができます。小型でしかも低価格な道具がもっと増えていくでしょう。そうなれば大量生産を前提としていた建築部材が、こうした工作機械の登場で、いつでも、どこでも、誰でも、必要な時に、必要な分だけものが作れるようになります。
お二人の作品はシンプルなシステムの繰り返しによってできています。その考え方はもしかするとこうしたデジタルファブリケーションでものをつくるには向いているのかもしれません。木造の加工も簡単なものであれば、設計士が自ら作ったり、または大工がプレカット工場を使わずに自分たちで加工するということができるかもしれません。もちろん全てがそうなるとは言いませんが、大工がもっと建築に関われる領域を広げていくこと、そこにプライドややりがいをうみだしていける社会がくればいいと話していました。それぞれの人が自分の活動領域を広げることで仕事がもっと創造的になるのです。そのことは作り手の達成感でもあります。お二人は建築設計のやりがいを「ものを完成させる喜び」とも言っていました。いくら創造的な提案であっても実現しないととても虚しいと。建築家であれ、大工であれ、ものをつくる喜び、そこに持続できるモチベーションが必要です。大工の低減は大工としてのモチベーションがなくなってきたからだとも言えそうです。
みなさんはどのように感じますか。ご意見お寄せください。
 

プロフィール
会社名:有限会社 大建met (ユウゲンガイシャ ダイケンエムイーティ)
一級建築士事務所 岐阜県知事登録第10821号
所在地:岐阜市若宮町1-10
代表
平野勝雅(katsumasa hirano)
1975 岐阜県生まれ
1999 名古屋工業大業卒業
布村葉子(yoko nunomura)
1976 岐阜県生まれ
1999 名古屋工業大学卒業